注射器で空気をギュッ! 目で見る「ボイルの法則」の実験

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

目に見えない「空気」ですが、実は私たちをいつも力強く押しています。もし、その空気をギュッと閉じ込めて、さらに押し縮めたらどうなると思いますか? 今日は、そんな空気の「力(圧力)」と「大きさ(体積)」のふしぎな関係を探る、「ボイルの法則」の実験をご紹介します。お菓子の袋が山の上でパンパンになる、あの現象のナゾが解けるかもしれませんよ!

実験に使った道具たち

今回使ったのは、ナリカさんから出ている実験セットです。 セット内容としては、大きな注射器、圧力計、そしてそれらをつなぐゴムチューブが入っていました。シンプルですが、これで空気の秘密に迫れます。

実験スタート! 空気をギュッと圧縮します

まずはセッティングです。注射器にゴムチューブをつけて、圧力計も接続します。 今回は、注射器の中の空気の体積が読みやすいように、50mlのメモリからスタートしました。

スクリーンショット 2016-04-16 5.24.09

マニュアルでも50mlになっていたので、同じ条件ですね。

スクリーンショット 2016-04-16 5.24.20

このスタート時点での圧力計のメーターは、およそ100kPa(キロパスカル)のところにあります。これは、私たちが普段生活している場所の大気圧(空気の重さによる圧力)とほぼ同じ値です。

ここから、注射器のピストンをグッと押していきます。 閉じ込めた空気の体積を小さくしていくと…予想通り、圧力計のメーターがグングン上がっていきます!

スクリーンショット 2016-04-16 5.24.09

結果発表!圧力と体積の美しい関係

気圧が100kPaのとき(スタート時)、110kPaになったとき、120kPaになったとき…と、押す力を調節しながら、その時々の空気の体積をメモリで測定していきます。こちらが、そのデータをまとめたものです。

スクリーンショット 2016-04-16 17.48.52

この数字だけ見てもピンと来ないかもしれませんが、これをグラフ(P-Vグラフと言います)にしてみると、驚くほど美しい関係が見えてきます。

スクリーンショット 2016-04-16 17.37.58

どうでしょう! この曲線、数学で習った「反比例」のグラフそのものですね。 つまり、「体積を半分にすると、圧力は2倍になる」という関係が隠れていたのです。

なぜ反比例になるの?

では、なぜこんな関係になるのでしょうか? 空気は、目には見えませんが、たくさんの「空気のつぶつぶ(分子)」が飛び回っています。圧力が生まれるのは、このつぶつぶが注射器のカベにぶつかるからです。

注射器を押して体積(部屋)を狭くすると、どうなるでしょう? つぶつぶが動き回れるスペースが減るので、カベにぶつかる回数が多くなりますよね。これが「圧力が上がる」ということです。 体積を半分にすれば、ぶつかる回数は単純に2倍になる。だから、圧力と体積はきれいな反比例の関係になるのです。これがまさに「ボイルの法則」です。

教室でのチャレンジ

この実験セット、とりあえず一つ買ってみたのですが、さっそく授業で生徒たちに体験してもらいました。 代表の生徒にピストンを押してもらったり、引いてもらったりしながら、みんなでメモリを読み上げ、記録をとって、グラフ用紙に点を打っていく…という作業です。

教科書で「反比例になります」と学ぶだけでなく、こうして「目で見て、手で感じて、グラフに描く」という体験を通して、空気の性質を実感できたようです。 簡単に法則を確かめられるので、これはぜひ各班に一つずつ欲しいな、と思っています。

ボイル・シャルルの法則実験器

お問い合わせ・ご依頼について

科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中

科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!